猫に会う旅

6月の中旬、梅雨真っただ中の日本を脱出すべく、私と嫁さんは、マルタ共和国を目指して旅立ちました。
マルタ共和国?首をかしげる人も多いかと思います。マルタ共和国は、イタリアにあるシチリア島の南90kmぐらいに浮かぶ小さな島国です。

 なぜそんなマイナーな国に行こうと思ったのか?それは、嫁さんが手にした一冊の猫の写真集がきっかけでした。猫好きの二人は、定期的に猫専門雑誌を買っていて、その中でも、特に好きな写真家がいました。その人が出した写真集の舞台が、マルタ共和国だったのです。その写真集を見て以来、嫁さんは、ことあるごとに「ここに行ってみたい」と言うようになりました。
 嫁さんと一緒になって、4年経っていたのですが、結婚式も新婚旅行もしていなかったので、丁度いい機会だなと思い、マルタ行きを決めたのでした。調べてみると、日本からの直行便はなく、いったんイタリアで乗り換えなければなりません。
「マイナーな国に行くんだから、マイナーな方法で行ってみる?」
と、二人の間で盛り上がり、最終的にシチリア島から船でマルタに入る事にしました。一週間に一本しかない船便を逃さないように、船に乗るまで緊張の連続。約4時間ほどでマルタの港に到着しました。

 マルタに降り立った雰囲気をひとことで言い表すと「ぬるい」です。もちろんいい意味で。それまで旅してきたイタリアでは、スリに会わないようにとか、列車の中の物売りに売りつけられないようにとか、とにかく緊張してばかりだったのですが、マルタはおどろくほど治安が良いのでした。その証拠に、街のあちこちに自動の現金交換機が置いてあり、24時間稼働しています。イタリアでは駅ぐらいでしか見なかった自動販売機もちらほら見かけました。
 マルタについて、さっそく猫探しに。6月のマルタは夜8時過ぎても太陽が沈みません。日中は、ものすごく暑くて、街を出歩く気にもならないのですが、猫を探して二人は街を歩き続けます。しかし、一向にいない。「なんでだろう」と意気消沈している間に、日が暮れて夜がやってきました。そうすると、街の家々の中から、おばあさんたちが、椅子を道端に出して、座って涼んでいます。
「そうか、おばあさんが家の中に引っ込むぐらい暑いのに、猫が外にいるわけないよ」
と、二人は気づきました。翌日は、日が沈んでから散策をしてみました。すると、あちこちの窓辺に猫たちが横たわっています。「おお、やっぱり猫多いね!」と喜んでいたのですが、夜だと猫の写真が撮れない。どうしようと考えて、まだ暑くならない早朝に狙いを定めました。
 ホテルの朝食が始まるより早く起きて街を歩くと、いるはいるは。公園などは猫だらけ。そこには、猫にエサをあげているおばちゃんが一人いました。おそるおそる、つたない英語で話しかけてみると、生まれたばかりの子猫や、あの猫は手で餌を持って食べるとか、いろいろと教えてくれました。もともと、船の中のねずみを退治するするために飼っていた猫が、港町であるマルタに集まり、人々に大切にされた歴史があるそうで、マルタの人は猫を敬っているとのこと。筋金入りの猫好き国家と、そのおばちゃんは言っていました。

 そんなこんなで、観光地をめぐることもなく、猫との出会いを求めて5日間滞在したマルタ共和国。ほとんど知らなかった国ではありましたが、夜でも安心して歩けるし、シャイだけどまじめなマルタの人たちは、道を聞けば必ず教えてくれる。ものすごく気持ち的にゆっくりできた海外旅行でした。

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